そば切 雨耕庵
古民家で味わう “ぼたんそば”
札幌中心部からは少し離れた西区の西野は緑の山々も近くに望め、鮭も遡上するような川が流れるのどかな住宅地です。そんな中にひっそりと店を構える「そば切 雨耕庵(うこうあん)」は、最寄りの駅(地下鉄東西線発寒南駅)からは歩けば30分はかかる(※1)という場所ながら、そのそばを求めて蕎麦通が足繁く通うことで知られます。
それもそのはず、この店はミシュランガイドで札幌の蕎麦店ではたった4軒だけという “ビブグルマン” の獲得店であり、大手グルメサイトの評価でも札幌トップ3に入るという店なのです。
店構えは古民家風、玄関を入ったら靴を脱いで上がるのにも違和感はありません。
店内には中央の部屋にカウンター使いもできるような大きめのテーブルがあり、奥に座敷と手前に掘りごたつ式小上がりの部屋があるという、まさに古い民家そのものを思わせる造りです。
この店でのお決まりは入店したらまず、“声をかける”こと(部屋の入り口にその旨掲示あり)。
ご夫婦2人だけで切り盛りしているため、女将さんも厨房にいることが多いからでしょう。声をかけて人数を伝えれば席を指定してくれるので、座ったら早速注文です。
雨耕庵では、道内の浦臼町で契約栽培された「ぼたん」(※2)という蕎麦を使っています。わずかな生産量ながら味や香りに優れることで知られ、現在は一部の店でのみ使われている希少な品種です。
その「ぼたんそば」をそば殻を取り除いて石臼で挽いた「(丸)抜き」と、玄そば(殻付き)のまま挽いた「田舎」という2種類のそばで提供しており、さらに「田舎」には一日5食限定の「太打ち」も用意されます。
「抜き」は見た目の白っぽい細麺で、のど越しの良さに蕎麦の香りと甘さを味わうことができます。一方の「田舎」はともすればそば “殻” の食感が残るほど野趣に溢れ、特に限定の「太打ち」はしっかり噛んで蕎麦らしい滋味とその食べ応えを楽しめます。
品書きは基本が冷たい「もりそば」と温かい「かけそば」。
そして冷たいそばには「おろしそば・おろし納豆そば・かしわせいろ・かき揚げせいろ」、温かいそばには「かしわそば・かき揚げそば」などがあります。冷たいそばは「抜き」と「田舎」を半分ずつ盛り合わせた「二色もり」も可能です。
バリエーションメニューの「かき揚げ」はザックリ大きめにカットされた野菜が揚げられており、中でも玉ねぎの甘さが印象的です。
ここ「雨耕庵」は有名店ながらそんな素朴で気取りのない雰囲気が特徴で、ご主人と女将さんの接客にも「そば」や料理の味によく表れています。
きっとそんなところが、この店をより魅力的にさせているのでしょう。
なお、店外(入口横)にも掲示されていますが、「高額紙幣のご使用はご容赦下さい」とあるので、訪問時は(念のため)ご配慮の程を。
※1 発寒南駅から「福井えん堤前」行き or「平和の滝入口」行き乗車、「西野二股」バス停下車徒歩5分
※2「ぼたん(牡丹)そば」は北海道で古くから作付けされていた品種ですが、丈が高いため倒伏や脱粒しやすく収穫量も少ないので栽培が難しいとされていました。その後改良品種である「キタワセソバ」が早生や収穫量の拡大に適した特性を持ったことにより、北海道一円で栽培される代表的なソバ品種となっています。しかしながらその香りや味の良さにこだわるそば職人がわずかに栽培される「牡丹そば」を使っており、今回ご紹介した「雨耕庵」はその代表的な一軒になります。
その他の写真
店データ
- 店名
- そば切 雨耕庵
- 住所
- 札幌市西区西野6条5丁目5-25
- 電話番号
- 011-662-7361
- 営業時間
- 11:30〜16:00(売り切れ終了)
- 定休日
- 火・水曜日
- アクセス
- 地下鉄東西線発寒南駅 徒歩30分(バスあり)
- 予算
- 1〜2,000円