蕎麦 心空
名店「竹やぶ」のDNAを受け継ぐ蕎麦店
今回ご紹介する店は、そば好きなら知らぬ者のいないほどの名店「竹やぶ」のDNAを受けた「蕎麦 心空(しんくう)」です。
竹やぶとは千葉県柏市に店を構える手打ちそばの店で、その弟子たちが東京を中心に多数存在し、今では「竹やぶ系」とまで呼ばれています。
古くは千寿竹やぶや吟八亭やざ和。そして三合菴に織田(閉店)などがこの店から巣立って有名店となり、その後もじゅうさん・玉笑・東白庵かりべなど、錚々たる人気店を輩出しました。
(参考)「千寿竹やぶ HP」
しかし札幌をはじめ北海道に竹やぶ系の蕎麦店はほとんど見当たりません。
十数年前、東京の三合菴で修行経験のある職人が札幌で「艸菴(そうあん)」という蕎麦店を開いたときには、その竹やぶ系らしい江戸前のそばは注目を集めたものです。
しかしその艸菴も既に閉店、札幌は再び “竹やぶ無縁の地” になっていました。
そんな札幌に平成29年(2017年)、大いなる志を抱いた若きそば職人が一軒の蕎麦店をオープンしました。それが「蕎麦 心空」です。
千葉県出身のご主人は、竹やぶ系でも番頭格ともいえる千寿竹やぶで修行、さらには前出の艸菴でも働いたことがあるという完全な竹やぶ系の職人。
「北海道で江戸前のそばを味わってもらおう、北海道にはあまり根付いていない “蕎麦前” の文化を少しでも広めたい」そんな気持ちから札幌への移住を決意したとのこと。
その「そば」は主に北海道産のそば粉を使って香り高く打ち上げますが、特徴的なのは「そばつゆ」。
北海道の(蕎麦店の)そばつゆはやや甘口の傾向にありますが、心空のそばつゆは一口含むだけで江戸前らしい辛口のかえしと本格的な出汁が感じられます。
その江戸前を味わうには「もりそば」がおすすめ。
最初はそばつゆには薬味を入れず、そばにも少しだけつけて、その辛さと旨みを感じてみてください。
「あらびきそば」はさらに蕎麦粉感があり、その分香りもしっかり立ってくるのでもりそばとの食べ比べも楽しいでしょう。
これら「冷たいそば」は蕎麦の香りを満喫することができる看板メニューですが、一方の「温かいそば」もおすすめです。
この店の「かけそば」はシンプルながらその分、そばのしなやかな口当たりと出汁のおいしさを十分に感じることができます。
そばに使う種物の具材はそれぞれにこだわったものを使用。特に滝川産の鴨を使った「鴨そば」は肉を別皿で提供しています。
一般的な「鴨せいろ」などでは、温かいつけ汁に鴨肉も入っていますが、この店の鴨は単なるそばの具材としてではなく、料理として自信の一品なのです。
それゆえ鴨皿は単品でも「鴨の相焼き」としてメニューに並ぶほど。
実はこれ、ご主人が修行した千寿竹やぶの名物料理でもあります。
その千寿竹やぶ同様に、鴨肉には定番の長ネギには「千住葱」を使用。
「千住葱」とは東京足立区の千住河原町で、長ネギしか扱わない市場「山柏青果物市場」で取引されるブランド葱。その甘さが特徴で特に醤油系の味付けにはよく合い、東京の老舗すき焼き店などでも使われている高級野菜です。
このブランド葱を味わうなら「千寿ねぎの天ぷら」もおすすめです。
その甘みを存分に味わうことができます。
そんな料理まで用意される心空では、もちろん「蕎麦前」も大歓迎。
日本酒も燗向きと冷酒に分けて用意しています。
銘柄は順次入れ替わりますが、辛口、甘口や淡麗、濃醇などタイプの異なるものを揃えているので、ご主人に好みを言えば選んでもらえます。
酒肴も、酒飲みの好みをよく知るラインアップ。
そば屋定番の「板わさ」や「だし巻き」はもちろん、自家製の「豆腐」、「あげ焼き」など。
「天ぷら盛り」は野菜が中心ですが、「穴子」や「きす」の良いものが入れば天ぷらのメニューが増えます。
ご主人は食材にこだわり、足繁く市場に仕入れに行っています。
そこで見つけたおすすめ品や限定の一品料理などは手書きのメニューに並ぶので、蕎麦前を楽しむときには要チェックです。
基本ご主人一人で営業のため(アルバイトも入ります)ランチタイムには混雑状態になってしまうこともあります。蕎麦前を楽しむなら、比較的ゆっくりと(カウンターで一人飲みも)できるディナータイムの利用がおすすめです。
その他の写真
店データ
- 店名
- 蕎麦 心空 Webサイト
- 住所
- 札幌市中央区北1条西19-2-17 表参道明豊ビル1F
- 電話番号
- 011-213-8118
- 営業時間
- 11:30〜15:00、17:00〜21:00
- 定休日
- 水曜日、第1・3木曜日
- アクセス
- 地下鉄東西線西18丁目駅 徒歩5分
- 予算
- 1〜2,000円