日本酒をじっくり味わうなら「燗酒」で!燗上がりのおすすめ銘柄8選

日本酒をじっくり味わうなら「燗酒」で!燗上がりのおすすめ銘柄8選

日本酒をじっくり味わうなら「燗酒(かんざけ)」をおすすめします。
食中酒として料理とともに味わう日本酒には旨みがたっぷりで、温度によってその表現が変わるからです。
今回は、燗酒の基礎知識やお燗をすることで香りや味の引き立つ「燗上がり」のお酒をご紹介します。
どれもが幅広いジャンルの料理に合う「究極の食中酒」なので、ぜひいろいろな燗酒を体験してみてください。

燗酒とは?

「燗酒」とはその字の如く「お燗をしたお酒」、つまり加熱したお酒のことです。
お酒を温めることで、飲んだときに身体も温めてくれる効果があることから特に冬季などには好まれる傾向があります。

さらに、日本酒は多くのお酒の中でも珍しい温度によって味わいが大きく変わるという特徴があることも見逃せません。
その為お燗の温度とその香りや味わいの傾向によって、以下ような分類がなされています。

飛び切り燗(55℃前後)最も辛口を感じる
熱燗(50℃前後)辛口を感じるようになる
上燗(45℃前後)香りが引き締まる
ぬる燗(40℃前後)香りが開き口当たりも滑らかになる
人肌燗(35〜37℃前後)香りが立ち味に膨らみが出てくる
日向燗(30〜33℃前後)ほんのり香りが立ってくる

一般的には「ぬる燗」〜「上燗」くらいがバランスが良く、多く好まれるようです。

燗酒におすすめの酒とは?

お酒を燗するのにルールはありませんが、基本的な傾向からいえば米の旨味や酸度が高めのお酒。分類的には「純米酒」、中でも「生酛」や「山廃」と表示されているお酒がお燗向きといえます。
さらには辛口の「本醸造」なども燗することでキレの良い辛口が引き立ちます(これらを「燗上がり」する酒と言います)。

一方、「吟醸酒」系で特に華やかな芳香やスッキリした口当りを特徴とするものは冷やすことでより持ち味が活かされますが、燗してしまうとその香りが消えてしまう場合があります。
その他、火入れを行わない「生酒」も出来立てのフレッシュ感が特徴のため、主に冷やして飲まれています。
吟醸酒や生酒にも燗することで味わいが深まるものも存在しているので一概に決めつけられませんが、これらの基本は一般論として覚えておいても損はないはずです。

それでは、実際にお酒選びに役立つおすすめの銘柄をご紹介して行きましょう。

神亀(埼玉県)

「神亀(しんかめ)酒造」は、近年の日本酒界で最も注目を集めた酒蔵といっても過言ではありません。
その理由は30年以上も前に(戦後の)日本で初めて全量「純米酒」だけの製造に変えた酒蔵だからです。
それは「純米酒こそが正統な日本酒である」という考えをベースに「純米酒こそがどんな料理の味をも引き立てる酒である」という神亀の理念を証明する試みでもありました。

神亀酒造は埼玉県の蓮田市という、あまり酒造りのイメージのない場所にありますが、創業は嘉永元年(1848年)という長い歴史のある酒蔵です。
かつては全国的な知名度はほとんどありませんでしたが、今ではその徹底したこだわりの酒造りが広く認められ「日本酒ファンなら神亀を知らぬ者はない」と言われるまでになっています。

その代表酒ともいえる「ひこ孫」シリーズは3年以上蔵で熟成させた純米酒です。
「ひこ孫 純米清酒」は、阿波山田錦を55%まで磨き常温で熟成。飲み頃の温度は「常温〜60℃」と幅広く、神亀では「どんな料理でも受け止めます」としています。
これぞ“究極の食中酒”を目指す神亀の理念の表現でしょう。

同じく人気の「ひこ孫 純米吟醸」はおすすめの温度が「常温〜50℃」と、吟醸酒は冷やして飲むという概念を覆すもの。これは実際に飲んで、料理とともに味わって初めて理解できます。

「燗酒ならまずは神亀」これは覚えておきましょう。

  • 会社名:神亀酒造株式会社
  • 住所:埼玉県蓮田市馬込3-74
  • 詳細はこちら

菊姫(石川県)

「菊姫」は安土桃山時代の天正年間(1573〜1592)創業、400年以上の歴史を誇る現「菊姫合資会社」の代表銘柄です。
菊姫合資会社は昭和40年代(1965年〜)には全国新酒鑑評会での連続金賞受賞でその名を知られ、昭和58年(1983年)には日本で初の「山廃仕込純米酒」を発売しています。

その酒造りのこだわりは「良い材料・良い人材・良い設備」というもので、特に酒の重要な材料である「米」は国内最高品種とされる「山田錦(やまだにしき)」のさらに厳選した特A地域である「吉川(よかわ)町産」を中心に使用しています。

「菊姫 山廃仕込 純米酒」は特A地区「吉川町」産の山田錦を使い、山廃仕込みによってじっくりと醸されています。酸味の効いたしっかり旨みのある濃醇な「男酒」として燗での一杯が楽しめます。

  • 会社名:菊姫合資会社
  • 住所:石川県白山市鶴来新町タ8番地
  • 詳細はこちら

米宗(愛知県)

次は愛知県で「米宗(こめそう)」を造る酒蔵「青木酒造」をご紹介しましょう。

創業は江戸後期の文化5年(1805年)。以来、伝統と技術を活かした酒造りに励んでいます。
その特徴は濃厚で強い酒にこだわること。そのために「山廃・生酛仕込み」「酵母無添加」そして「完全発酵」などの技術を駆使し、旨みがありながらキレも良い酒を醸造しています。

酒造りの基本は「麹や酒母を鍛え抜く!」という考えにあります。
よって、出来上がる酒は(造りによって)様々あるものの、共通して喉ごしのキレが良く米の旨み・味わいを感じるものです。
さらに「酸味」もしっかり出すことにより燗にした時に味が柔らかくふくらむことも特徴で、「飛び切り燗(55℃前後)」にしても味が崩れず、燗冷ましでその(温度ごとの)変化を楽しむことができます。

これらは青木酒造が目指す濃厚で強い酒ゆえに体験できる、燗酒の醍醐味といえるものでしょう。

  • 会社名:青木酒造株式会社
  • 住所:愛知県愛西市本部田町本西60
  • 詳細はこちら

悦凱陣(香川県)

「悦凱陣(よろこびがいじん)」も日本酒通の支持が多い銘柄です。
香川県琴平にある小さな酒蔵「丸尾本店」が醸すその酒は、単純な飲みやすさとは無縁のしっかりとした深い味わいが特徴。まさに燗酒向きといえるでしょう。

かつて(慶応の頃)、高杉晋作が探索の手を逃れて徳川幕府の直轄地であった琴平に潜伏していた折にはこの蔵で匿ったという逸話があるほどの伝統蔵で、現在は4代目の社長自らが杜氏を兼ねる「蔵元杜氏(くらもととうじ)」となっています。

酒米や仕込み方の違いで25種類ほどの品種がありますが、特筆すべきは「オオセト」という地元米を使い、この地(香川県)ならではの酒造りを行なっていることです。

「悦凱陣 無濾過生純米酒 オオセト」は原料米にオオセトを100%使用し、日本酒度はプラス6度の辛口ですが、特徴的なのは酸度が「2.2」という高さ。これによって旨みが深く、燗によってさらに味わいの広がるお酒になっています。

  • 会社名:有限会社 丸尾本店
  • 住所:香川県仲多度郡琴平町榎井93
  • 詳細はこちら

玉川(京都府)

「燗酒」をテーマにしたならこのお酒も外せません。京都の「玉川(たまがわ)」です。

「玉川」を醸す「木下酒造有限会社」は京都の日本海側、京丹後市で天保13年(1842年)に創業した歴史のある酒蔵ですが、最近では杜氏が外国人であることや氷を入れて飲む酒(Ice Breaker)を売り出すなどの新たなチャレンジが注目されています。

しかしながら、あくまでこの蔵の酒造りは「旨み」の追求が基本。
飲みごたえがよく酒だけでも楽しむことも、温度や熟成の変化で様々な料理に合わせることもできます。ゆえに「燗酒」への対応は、言わずもがなです。

「飛び切り燗」と呼ばれる55℃などは「玉川」にとっては最低ラインの温度ともされるほど。
しっかり燗をつけても味が崩れず、そこから温度が下がる毎に変化する味をいろいろ楽しめるのが「玉川」の特徴である幅の広さです。

  • 会社名:木下酒造有限会社
  • 住所:京都府京丹後市久美浜町甲山1512
  • 詳細はこちら

開運(静岡県)

「開運(かいうん)」を醸す土井酒造場は、静岡地酒のブームを牽引した酒蔵のひとつです。
静岡県掛川市での創業は明治5年(1872年)と比較的新しい蔵ですが、技術派の蔵元と「能登四天王」とまで呼ばれた名人杜氏である波瀬正吉氏による酒造りは他の追随を許さないもので、着々とその評価を高めて来ました。

波瀬杜氏の後を継いだ現杜氏も、その技をしっかりと受け継いでいます。
原料米に酒造米の王様とされる兵庫県産の山田錦をコストを惜しまずに使うことなどは、その徹底した品質の追及によるものでしょう。

「開運 純米ひやおろし」は、ひと夏を越えてほどよい熟成感を纏って秋に出荷される数量限定の純米酒。
酸度は高くないものの旨み・甘みとのバランスが秀逸で、冷やはもちろんのこと、ぬる燗ではその風味がさらに柔らかく立ち上がります

  • 会社名:株式会社 土井酒造場
  • 住所:静岡県掛川市小貫633
  • 詳細はこちら

秋鹿(大阪府)

「秋鹿(あきしか)」は日本酒の味、とりわけ米の旨さを改めて教えてくれる酒として近年その評価が高まっているブランドです。

明治19年(1886年)創業の秋鹿酒造は、大阪という大都市のイメージからはかけ離れたともいえる自然にあふれる豊能郡の能勢町に蔵を構えます。
良質な酒米を確保するために、蔵元自ら土造りにまでこだわった稲田で山田錦を栽培し、日本酒本来の味わいのために醸造用アルコールの添加を廃止し全量を純米酒として製造しています。

秋鹿酒造のお酒は日本酒ならではの(米由来の)旨みがありながらクリアなキレ味をも持ち、日本酒を飲んだ後に残りがちなベタベタ感がない。そのため塩や醤油と合わせる刺身などの魚介類はもちろん、甘みも含むソース系の料理(牛肉や鴨など)にもよく合います。

そんな腰のしっかりした造りなので、「燗上がり」することこの上ないお酒といえるでしょう。

  • 会社名:秋鹿酒造有限会社
  • 住所:大阪府豊能郡能勢町蔵垣1007
  • 詳細はこちら

大七(福島県)

「大七(だいしち)」は今や燗酒日本一とまで評するファンがいるほどのブランドです。
中でも「大七 純米生酛」は各種コンテストや調査、例えばNIKKEIプラス1の「おせち料理によく合ってお燗にすると美味しい日本酒」などで第一位に選ばれたこともあります。

その高評価の理由は、大七酒造が手間と時間を要する「生酛(きもと)造り」に徹底してこだわっているからでしょう。
手造りともいえる昔ながらの手法により、米などの旨みを究極まで引き出します。そしてその旨みは「燗」をすることでさらに膨らみ、そして広がります。

「大七 生酛純米古酒 不倒翁(ふとうおう)」は、大七の看板ともいえる「生酛純米」を古酒まで熟成させて満を持して出荷する逸品。その熟成の歳月の間に湛えた旨みは、飲まれる直前の“燗”によって花開きます。
酒蔵も「是非、お燗でお召し上がりください」としているほど。

まさに「燗酒」のために醸されたお酒です。

  • 会社名:大七酒造株式会社
  • 住所:福島県二本松市竹田1-66
  • 詳細はこちら

「燗あがり」を楽しもう

今回は、燗をしておいしい「燗上がり」の日本酒をご紹介しました。
どれもが「究極の食中酒」といえる銘酒揃いです。
食事をさらにおいしくしてくれる魔法の飲み物「燗酒」。好みの料理に合わせて、マリアージュを楽しんでみませんか。