寿司を食べるなら知っておこう!グルメに役立つ豆知識(実践編)

寿司を食べるなら知っておこう!グルメに役立つ豆知識(実践編)

現代の寿司屋いろいろ

前コラム「寿司を食べるなら知っておこう!グルメに役立つの豆知識」では、寿司の歴史と寿司を食べる上でいろいろ疑問に思うことについて、簡単な説明とともにまとめてみました。
今回はのその「実践編」として、どのように寿司を注文すればよいのかなど、実際に店で役立つ情報を具体的にご説明したいと思います。

「寿司」は日本人にとって人気の食べ物。好きな食べ物の調査ランキングではトップに輝くことも多く、ほとんどの場合でもトップ3に入っているほどです。
そんな寿司ですが、一方では「敷居が高い(値段も高い、そもそも表示がない)」とか「注文の仕方(ルール・常識)がわからない」などの不安も多くの方が持ち合わせているようです。

明朗会計の「回転寿司」

「明朗会計」の回転寿司

現代の寿司屋にはいろいろなタイプの店があります。
特に値段の違いが大きく、庶民派から高級クラスの店まで分類できるでしょう。
庶民派の代表は「回転寿司」。ここでは寿司などの値段が明確に示されており、注文端末を設けている店もあるなど、不安なく寿司を楽しめるようになっています。
一方で、高級クラスとされている店は敷居の高さはあるものの、寿司は「おまかせ」としてコース設定されていることが多く、客は出されるものを食べるだけ。値段も事前に確認できる店がほとんどなので「値段が高いことは承知」での利用ということになります。

高級店は「おまかせ」で

高級店は「おまかせ」で

つまり(庶民派の店と高級店)ともに寿司の知識や常識など、ほとんど必要ないともいえます。
しかし「普段使いは庶民的な店だが、たまにはもう少し高級な店にも行ってみたい」。そう思うこともあるでしょう。この場合、高級店は値段が高すぎて候補に入らないとなれば、その次クラス(値段的に庶民と高級の中間)の店を選ぶことになるかもしれません。

江戸前寿司の名店「㐂寿司」

江戸前寿司の名店「㐂寿司」

その中間クラスに位置する店には歴史のある江戸前寿司の店などが多く、高級店のように “出るものを食べればよい” という店はあまり多くありません。
最近では簡単なセットメニュー(「にぎり5,000円」など)を提示している店も増え、比較的注文しやすくなっていますが、中にはメニューもなく「タネ札」(寿司タネを表示した札で売り切れると裏返される)だけで値段の表記は全くない店もあります。
先に書いた “寿司屋への不安” はまさにこんな店に当てはまることになるのですが、それは寿司の醍醐味を楽しめることと表裏一体でもあるのです。
かつて魚タネの鮮度をなるべく保つ目的で生み出された手法(仕事)が、結果的においしい寿司として伝統的に受け継がれることになったからです。
事項ではその説明を進めていきましょう。

寿司の「一人前」

(江戸前)寿司には上記の「おまかせ(コース)」が流行する以前から、基本的な「一人前」という概念がありますが、その説明にはまず寿司タネの基本を説明する必要があるでしょう。
(以下、魚介の寿司タネは基本カタカナ表記で統一します)

イメージ写真

イメージ写真

まず寿司タネには慣習的に魚の見た目で「白身」「赤身」「光りもの」などがあり、魚介の種類として「イカ類」や「貝類」などがあります。
調理法では「煮物(茹で・蒸しを含む)」、提供のスタイルとして「軍艦巻き」や「太巻き・細巻き・手巻き」、さらに魚介以外のタネの代表としては「たまご」があります。

これらの寿司タネを組み合わせて「一人前」の握りを構成し、ランチタイムなどにはこの内容を基準として、各店独自のメニューを設定しています。

札幌「すし処 北斎」の高コスパランチ一人前

札幌「すし処 北斎」の高コスパランチ一人前

寿司の「お好み」とは文字通り、「好きなものを好きな順番に」食べればよいというスタイルです。
この点については前回のコラムでも肯定の立場を取っています。
しかしながら長年の寿司文化において伝統的に提供されているスタイルもあり、とても興味深いものです。
知っておいて損のない豆知識であり、本コラムのテーマでもあります。

一例として、東京神田で創業120年近い歴史を誇る老舗「神田 笹寿司」のメニューをご紹介しましょう。
この店ではもちろん「お好み」でも注文できますが、気軽に注文しやすい「一人前」が用意されています。
その「並(税込2,200円)は「生本鮪2貫・白身・生いか・煮いか・薄焼きたまご・〆もの・かんぴょう巻(2切れ)」(文字使いは店の表記どおり)という内容です。
この店ではメニューに「すし」の並・中・上がしっかり掲げられています。そのほか、当日のおすすめ寿司タネが案内されていることもあります。

ここで注目すべきは、笹寿司でも「一人前」には先にご説明した寿司タネの基本を組み合わせているということ。
「白身」に「締めもの(コハダ等)」、赤身の代表マグロ、イカは生と煮物、そして「たまご」に「細巻き(かんぴょう)」という基本どおりの構成になっています。
前コラムでもご説明しましたが、この「一人前」はお好みメインの店ではメニューとして掲げていなくても注文すれば握ってくれることが多いはずなので、ぜひ覚えておきましょう。

「神田 笹寿司」についてはこちらをご参照ください(江戸前寿司についての興味深い内容が満載です)。

おすすめの注文方法

さらに、この「一人前」を覚えておけば、お好みで注文する場合にも役立ちます。
お好みは「好きなものを好きなだけ、好きな順番で」と記していますが、「淡白なものから濃厚なもの、そして甘いもの〜巻物」という順番もひとつの基本パターンといえるものなのです。

具体的にご紹介していきましょう。
なお、寿司タネの写真は(サツメシでも紹介している)札幌の寿司店2軒のものです。
各写真は以下のとおり、どちらの店のものかを「すし 宮川」(宮川)、「鮨 かん壱」(かん壱)として明示してあります。

白身のマダイ(かん壱)

マダイ(かん壱)

まず淡白なものとしては「白身」です。
代表的な寿司タネとしてはヒラメ、タイなど。夏の時期にはカレイ類が使われることもあります。
これらの魚からスタートすることによりその繊細な味や香りを楽しめて、さらにシャリの味をしっかりと感じることもできるでしょう。

ヤリイカ(かん壱)

ヤリイカ(かん壱)

白身に加えてもう少し淡白なものを食べたい、あるいは好みの白身がない場合などにはイカ類がよいかもしれません。
イカには多くの種類がありますが、寿司タネとしてはスミイカやアオリイカなどが使われます。

コハダ(かん壱)

コハダ(かん壱)

次に「光りもの」。これは背の部分が青く、腹が光っている魚で、代表にはコハダがあげられます。
コハダは寿司に使われるためにある魚といっても過言ではなく、刺身や焼きで提供されることはほぼありません。寿司では酢締めして使われ、「締め(〆)もの」と呼ばれます。
そのほかの魚ではサバやアジ、キスやサヨリなども光りものに分類されます。

車海老(かん壱)

車エビ(かん壱)

「煮物」は文字通り煮た魚ですが、これは「茹で」た魚介をはじめ、「蒸し」たり独特の煮汁に「漬け込む」タネもあります。
茹でたものでは車エビ。江戸前の海老の代表ともされるもので、赤く茹であがった様は「くまどり」を思わせる優雅さがあります。さらにタコや蒸したものではアワビ(塩蒸し)などがあります。

穴子(イメージ写真)

穴子(イメージ写真)

煮物にはさらに「ツメ」を塗って提供するタネもあります。
代表的なものにはアナゴがあります。店によっても異なりますが、一般的には酒・醤油・みりん・砂糖などの煮汁を煮詰めたものが「ツメ」(甘いタレ)で、それをアナゴなどに塗って供します。
同じくツメを使うタネにはシャコなどもあり、蒸しアワビやタコに塗られることもあります。

シャコ(つまみ・かん壱)

シャコ(つまみ・かん壱)

淡白なものから、徐々に味の濃いものに進んできたことがお分かりでしょうか。
ここまで白身・イカ・光りものを数貫ずつ食べているでしょうから、この辺りで「メイン」とするのもよいかもしれません。
寿司のメインといえば、何といってもマグロでしょう。

大トロ(かん壱)

大トロ(かん壱)

マグロは見てのとおりの「赤身」魚です。同じ赤身には「カツオ」などが該当します。
お馴染みの魚なので、説明は不要かもしれませんがまずは寿司タネとしてはまず「赤身」、そして「中トロ・大トロ」があります。最近の店ではその他の希少部位を提供する店も増えてきましたが、江戸前の代表的な仕事としては何といっても「漬け(ヅケ)」です。

ヅケ(宮川)

ヅケ(宮川)

「ヅケ」はマグロ(元々は赤身)を醤油で漬け込んだもので、店によって漬けダレを工夫したり、漬け込み時間やタイミングに違いがあったりします。
かつてこのヅケを提供する店は江戸前の老舗店くらいでしたが、最近では流行といえるほど一般的になっており、赤身に加えて中トロなどのヅケを出す店も増えているようです。

トリガイ(宮川)

トリガイ(宮川)

さてメインのマグロまで来ましたが、その他の寿司ダネとしては「貝類」があります。
アワビなどは煮物(蒸し)として取り上げていますが、アカガイやトリガイ、江戸前のハシラ、北海道などではホタテなどが寿司タネとして使われます。
この「貝類」をここまでのどこかに加えてもよいかもしれません(光りものの後など)。

ウニ軍艦(かん壱)

ウニ軍艦(かん壱)

そして「軍艦」として提供されるウニやイクラなどもあります。
この2つのタネは元々江戸前の寿司にはありませんでしたが、現代においては人気のタネということでどの店でも提供しています。
これをメインの後に味わうのもよいでしょう。

サバ(かん壱)

サバ(かん壱)

脂の強いマグロの後には「締めもの」での口直しを進める寿司職人もいます。
前半でコハダ、ここでサバなどと、分けて味わうのもおすすめです。

そろそろ締めに近づきます。ならばここで「たまご」を注文しましょう。
たまごも歴史ある寿司タネで、出来合いを仕入れて使う店も多いのですが、老舗の寿司店では独自スタイルのたまご焼きを作って提供しています。
マグロをメインとするなら、たまごは「デザート」に当たるかもしれません。

たまごとかんぴょう巻(宮川)

たまごとかんぴょう巻(宮川)

そして最後を飾るのは「巻物」になります。
江戸前の代表的な巻物は笹寿司でも出しているように「かんぴょう」です。
これで締めのお酒一杯でもよし、お茶をもらってゆっくり味わってもよいでしょう。

寿司屋では巻物を注文したら「終わり(ごちそうさま)」の合図ともされます。
以上で、オリジナルの寿司コースは大団円を迎えます。

基本のまとめ

以上、寿司の一人前を構成する代表的なタネについてご説明しましたが、最後にまとめておきましょう。

「基本タネ」:原則は淡白なもの 〜 濃厚なもの 〜 甘いもの 〜 締め。( )内は代表的なタネ
1. 白身(ヒラメ・タイ)
2. 光りもの(締めもの、コハダ・サバ・アジ)
3. 煮物(車エビ・アワビ・タコ・穴子・シャコ・ハマグリ)
4. マグロ(赤身・中トロ・大トロ・ヅケ)赤身魚としては(カツオなど)
5. たまご
6. 巻物(かんぴょう・かっぱ・鉄火)
「追加タネ」
・イカ類(ヤリイカ・スミイカ・アオリイカ)
・貝類(アカガイ・トリガイ・ハシラ)
・軍艦(ウニ・イクラ)

基本タネを各1貫、イカ+貝類各1貫なら合計7貫、そして巻物。
これは「神田 笹寿司」の一人前ともほぼ一致します。

この「一人前」をベースに、好みのタネを追加してみるとよいでしょう。
例えば、煮物はツメの有無で+1貫、マグロは(メインなので)赤身+1貫、マグロの口直しに光りもの1貫、ウニ とイクラを追加したなら合計は12巻+巻物。
いかがでしょう?しっかりした「コース」になってきましたね。

寿司の写真をご紹介した札幌の3軒

今回、寿司の写真を使った寿司店については以下のリンクをご参照ください。

すし 宮川

今や札幌を代表する名店。
あのミシュランガイドで、札幌の寿司店唯一の三ツ星を獲得しています。
札幌の高級店を代表する店としてのご紹介です。

<詳細はこちら>

鮨 かん壱

札幌の名店で腕を磨いたご主人が、2018年に独立した新進気鋭の寿司店です。
その気さくな接客によって、堅苦しさのない雰囲気で寿司を楽しめます。
注文に対しては融通も利かせてくれるので、寿司のことを学ぶなら格好の一軒といえるでしょう。

<詳細はこちら>

すし処 北斎

JR札幌駅すぐ近くという絶好の立地で、気軽に寿司を味わえる店としてご紹介する一軒です。
「ランチはコスパ抜群、ディナーはセットあり、お好みもOK」という今回の記事のモデル的な寿司店です。

<詳細はこちら>

自分好みの寿司をコース仕立てで味わおう!

今回は寿司の豆知識「実践編」として、寿司の食べ方についてご提案してみました。
あくまで一般論的な考え方をまとめたもので、決して「これが常識」とか「こうしなければならない」という話ではなく、伝統の実例をご紹介した上でのものです。
ただ、基本的なことを知っていれば、自分の好みに合う「コース」に仕立てた寿司を楽しむことができるでしょう。
ぜひ実践して、食文化としての趣深い寿司を味わってみてください。