北海道の2大ご当地焼き鳥「室蘭やきとり」「美唄焼き鳥」を味わおう!
「ご当地やきとり」とは
日本各地にはその土地ならではの「ご当地焼き鳥(やきとり)」があります。
各地の名産鶏や食材を使うなど、その土地固有の風土や歴史に育まれた焼き鳥です。
2006年に発足した「全国やきとり連絡協議会」では、全国の「やきとりの街」を定義していますが、それは次の3点を満たすことが条件になります。
1.「やきとり屋」の店舗数が多いこと
2.「郷土食(ソウルフード)」として定着した、一定の特徴を持つ「やきとり」があること
3.「やきとりの街」として宣言し、「やきとり」を通じた地域振興に取り組んでいること
以上の定義で認められた「やきとりの街」は全国に7カ所あります。
北海道の室蘭市・美唄市、福島県の福島市、埼玉県の東松山市、愛媛県の今治市、山口県の長門市、福岡県の久留米市です。
それぞれ独自の焼き鳥文化を発展させている街であり、旅行やグルメ情報などで目にすることも多いかもしれません。
北海道の「やきとりの街」
全国やきとり連絡協議会に参画する7つの街の中には、北海道から2つもの街が入っています。
この「室蘭」と「美唄」の焼き鳥こそが、北海道の「ご当地焼き鳥」といってもよいでしょう。
室蘭やきとり
室蘭といえば、「鉄のまち」として日本の鉄鋼需要を支えてきた都市であることは言うまでもないでしょう。
近年、新日鐵住金から名称変更された「日本製鉄」の室蘭製鉄所や「日本製鋼所」が大きな工場を構え、「JXTGエネルギー」の室蘭製造所や「函館どつく」(造船)の室蘭製作所など重化学工業の工場群も立ち並びます。
これら企業の労働者を抜きにして「室蘭やきとり」は語れません。
室蘭やきとりの最大の特徴は、使われる肉が鳥(鶏)ではなく「豚」であることです。
室蘭では日中戦争時代、軍靴製作に使用するために養豚を推奨していましたが、靴に使う皮と肉以外は一般に食べてもよいということになったため、屋台などで豚の内臓(モツ)が売られるようになりました。
室蘭では元々野鳥などを串焼きにして食べていたことから豚モツも串焼きにされ、これが室蘭の“やきとり”になったとされています。
実際にそれを店で売り出したとされるのは、室蘭の輪西に現在も店を構える「鳥よし」です。
帯広の同名店で修行した創業者が日中戦争開戦の年(昭和12年/1937年)に開店(屋台営業はさらにその前から)、この店でも豚のモツと野鳥の肉を串焼きにして提供していました。
その「やきとり」を求めて毎夜店に押しかけたのが、地元製鉄所の労働者たちでした。
一日の疲れを焼き鳥とお酒で癒していたのでしょう。
輪西には現在も日本製鉄の通用門があるように、輪西はその鉄鋼労働者で栄えた街でもあります。
輪西には「鳥よし」の他にも、現在は室蘭一の繁華街である中島町に本店を構える人気店「やきとりの一平」の創業店や、札幌に分店を構える「とり金」、そして「味鳥」などの焼き鳥店が今なお営業を続けています。
さらに、かつては室蘭一の繁華街として栄えた大町地区、浜町など(現在の中央町)にも老舗の「吉田屋」や「鳥辰」「やきとり勝長」などがあります。
「室蘭やきとり」の特徴は先に述べた肉が「豚」であることと、ネギが長ネギではなく「玉ねぎ」であること。そして「タレ」で焼き、「洋がらし」が添えられること。
“豚肉・玉ねぎ・タレ・洋がらし” が揃ってはじめて「室蘭やきとり」となります。
なお、室蘭やきとりを名乗る店でも、ほとんどの店では「鳥(鶏)」の串も用意されており、室蘭の焼き鳥は「豚だけ」ということはありません。
しかし、豚串のない店は「室蘭やきとり」は名乗れません。
室蘭やきとりの代表店:吉田屋
室蘭やきとりの代表店として「吉田屋」をご紹介します。
創業は昭和21年(1946年)、70年以上の歴史を誇る老舗です。
長年継ぎ足された少し甘めでトロみのあるタレが特徴で、まさに室蘭やきとりを代表する味付けといえます(このタレは別売しているほどの人気)。
現在は女将が一人で切り盛りしており、その味を守り続けています。
店名:やきとり 吉田屋
住所:室蘭市中央町2-3-6
電話番号:0143-23-2948
営業時間:17:00〜23:00
定休日:日曜日
アクセス:JR室蘭駅 徒歩3分
参考サイト:Facebook
美唄やきとり
札幌と旭川の中間に位置する美唄市、ここで生まれた焼き鳥が「美唄やきとり」です。
美唄はかつて炭鉱の町として栄え、その労働者に愛された食べ物が「焼き鳥」でした。
その特徴は、“鶏のいろいろな部位が一本の串に刺されて焼かれる” ことです。
店にもよりますが、基本的には串の先端から「モモ肉・モツ各部位・皮」という構成で、それぞれの間には玉ねぎが入ります。
「モツ」の部位はキンカン(鶏の体内の卵黄)・レバー・ハツ・砂肝など複数のものがランダムに刺されているので、数本を食べれば鶏一羽分になるといわれます。
味付けは「塩」(+コショウ)のみのシンプルなもの。ゆえに素材の品質が問われる焼き鳥ともいえるでしょう。
美唄焼き鳥ではこれを「モツ串」と呼びますが、もう一種類「精肉串」(「せい」や「セイニク」とする店も)として「ムネ肉」を焼いて提供しています(店によってはこの2種類を分けず、「鳥串」一種類だけという店もあります)。
美唄焼き鳥の店では「もつそば」が名物になっています。
鶏ガラなどで取った出汁を使ったつゆに「もつ」を入れることで、その旨味がさらに広がるというもの。美唄やきとりの「締め」には欠かせません。
美唄焼き鳥は昭和30年代、炭鉱の町美唄で焼き鳥店を始めた「三船」が発祥で、現在美唄焼き鳥の人気店となっている「たつみ」や「福よし」「鳥乃屋」などがその直伝継承店とされています。
元祖の「三船」は炭鉱の閉山とともに店をたたみ、暖簾分けなどで現在は岩見沢と札幌の数店舗にその名を残している状態です。
さらに岩見沢の三船から士別で独立した「鳥源」は、現在士別の本店閉店後「き助」という美唄焼き鳥店として復活。旭川店は一度閉鎖後、その後こちらも復活しました。
そして札幌店はJR札幌駅近くで連日満席の大人気店となり、その味と伝統を守っています。
美唄焼き鳥の代表店:焼き鳥 たつみ
美唄焼き鳥の正統伝承店として人気の店が「焼き鳥 たつみ」です。
美唄焼き鳥ならではの「もつ」は鶏の部位が数種類一緒に刺された串なので、数本食べるのが “お決まり” です。
もう一種類の串「精肉」はムネ肉を使っているので、しっかりとした食感で食べ応えもあります。
名物の「そば」や「とり飯」とセットになったお得なランチ(14:30まで)も用意されており、昼からの通し営業という使い勝手の良さも人気の理由となっています。
店名:焼き鳥 たつみ
住所:美唄市西1条南1丁目1-15
電話番号:0126-63-4589
営業時間:11:00〜21:00
定休日:火曜日(祝日営業)
アクセス:JR美唄駅 徒歩5分
参考サイト:やきとりの「たつみ」ネットショップ
もうひとつの「ご当地焼き鳥」:函館 ハセガワストア「やきとり弁当」
北海道の「2大ご当地やきとり」といえば、室蘭と美唄であることは論をまちませんが、もうひとつ忘れてはならない“ご当地”があるのです。
「函館」です。
函館の焼き鳥は、室蘭や美唄のようにご当地独特のスタイルで焼き鳥を提供する店が何軒もあるというようなものではありません。
その名を世に知らしめたのは函館にあるコンビニ、ハセガワストアの「やきとり弁当」です。
この焼き鳥も室蘭同様「豚肉」を使っています。
甘めのタレで焼いている(もちろん塩味もあります)ところも共通しています、少し違うのはネギが長ネギであることです。
この「焼き鳥弁当」を函館出身の人気グループGLAYのメンバーがメディアで紹介したことなどで、全国的な知名度を得ることになりました。
ハセガワストアはコンビニながら店内に(焼き鳥の)焼き場があり、焼き立てを提供してくれるとてもユニークなスタイルをとっています。
函館地区に12店舗が展開されていますが、ここでは最も有名な「ベイエリア店」をご紹介しましょう。
ベイエリア店には焼き場に加えてイートインスペースもあり、店内で購入したお酒類も飲めるので、ちょっとした「函館焼き鳥」の店として使うこともできます。
店名:ハセガワストア ベイエリア店
住所:函館市末広町23-5
電話番号:0138-24-0024
営業時間:7:00〜22:00
定休日:無休
アクセス:JR函館駅 徒歩20分、函館市電十字街 徒歩3分
参考サイト:ハセガワストア公式ホームページ
札幌で北海道のご当地焼き鳥を味わおう
北海道のご当地焼き鳥として「室蘭」と「美唄」の焼き鳥をご紹介しました。
ともに独創性の高い、まさにご当地の伝統と歴史から生まれ育ってきた名物です。
嬉しいことにそれぞれを専門とする焼き鳥店が札幌にもあるので、札幌ではご当地に行かずしてそれを楽しむことができます。
「サツメシ」では札幌で食べられる室蘭・美唄の焼き鳥店をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
※文中で一般的な料理としての表記は「焼き鳥」、全国やきとり連絡協議会の分類で説明する場合は「やきとり」の表記としています。