日本酒を飲むならこれだけは知っておきたい!グルメに必須の基礎知識
食事を楽しむ時にはお酒が欠かせません。特に日本の料理には日本のお酒、そう「日本酒」が抜群の相性を見せてくれます。
ここでは、グルメにとって必要な日本酒の基礎知識をご紹介します。
日本酒の世界は深くて調べれば調べるほど難しくなるので、ここでは単純明快に最低限の情報だけをまとめてみました。
(なお、ここでの「日本酒」は正確な分類上では「清酒」のことですが、記事内では「日本酒」で統一しています)
日本酒のスペック
日本酒を楽しむには“日本酒を知る”ことがポイントです。
そのためにはまず、日本酒の(裏)ラベルに記載される「スペック」を読めるようになりましょう。
日本酒(清酒)の分類:「普通酒」か「特定名称酒」
日本酒のラベルにはよく「大吟醸」とか「純米酒」とか記載されています。これはどういう意味でしょうか?
これは日本酒の原料や製法による分類です。そして日本酒は大きく分けて2つの種類があります。
一つめが「普通酒」、そしてもう一つが「特定名称酒」です。
特定名称酒:「本醸造酒」か「純米酒」
特定名称酒は、大きく2つに分かれます。一つが「本醸造酒」、そしてもう一つが「純米酒」です。
ここでは基本的な知識を得ることを目的とするので詳細な項目は割愛しますが、簡単に言えば「アルコールを添加するかどうか」です。
ある一定基準以内で醸造用のアルコールを添加するのが「本醸造酒」。
そしてアルコールは一切加えずに米と水(細かい話は別として)だけで造る酒が「純米酒」です。
これは日本酒のスペックラベル(裏にあることが多い)の一番最初(上)に書いてあることが多く、「米」「米麹」「醸造用アルコール」「醸造用糖類」などで判別できます。
まずここが「米」「米麹」だけであればそのお酒は「純米酒」になります。
そして「米」「米麹」「醸造用アルコール」とあれば「本醸造酒の資格あり」です。
さらに醸造用アルコールの添加量やその他の条件で「本醸造酒」(ここまでが特定名称酒)と「普通酒」に区別されます。
「吟醸酒」かどうか
特定名称酒はさらに「吟醸酒かどうか」という分類があります。
「吟醸酒」とは(次項で説明する)「精米歩合」が60%以下という定量的な条件に加え、「固有の香味と色沢が良好であること」という定性的な条件や「吟醸造りが用いられていること」があります。
この「吟醸造り」とは、その名の通り「吟味して醸造すること」であり「よりよく精米した米を低温でゆっくりと発酵させ、粕の割合を高くして特有な芳香(吟香)を有するように製造すること」。
つまり数値的なスペックに加えて、時間と手間をかけて丁寧に造られた香り高い酒ということになります。
この他、お酒のラベルなどで見かけるものに「特選」や「上撰」「佳撰」などがあります。
これは各酒造メーカーが、かつての「級別制度」があった時代の「特級」「一級」「二級」の区分けを引き継ぎ(商品選びの目安として)独自に設定したものです。
精米歩合
次のスペックは「精米歩合(せいまいぶあい)」です。
これは日本酒造りに欠かせない「米の磨き」具合のこと。米を精米機にかけて余分な部分を削る作業を「精米」と言います。
この精米を行う理由は、米は芯の部分がお酒にとって重要であり、周りの部分は不必要だからです。
日本酒のラベルを見ると「精米歩合○○%」などの表記がありますが、この数値は「精米後何%の部分が残るか」を表しています。つまり数値が少ないほど磨きが多く、米の芯に近い部分だけを使った(高級な)ものです。
一般的にこのスペックによって、最初の分類である純米酒」も「純米」「特別純米」「純米吟醸」「純米大吟醸」に、「本醸造酒」は「本醸造」「特別本醸造」「吟醸」「大吟醸」に分類されます。
この8種類が「特定名称酒」になります。
純米or本醸造 | 名称 | 精米歩合 |
純米酒 | 純米大吟醸 | 50%以下 |
純米酒 | 純米吟醸 | 60%以下 |
純米酒 | 特別純米 | 60%以下 |
純米酒 | 純米 | 規定なし |
本醸造酒 | 大吟醸 | 50%以下 |
本醸造酒 | 吟醸 | 60%以下 |
本醸造酒 | 特別本醸造 | 60%以下 |
本醸造酒 | 本醸造 | 70%以下 |
(全てに「香味や色沢」などの定性的な条件が加わります)
日本酒度
次のスペックは「日本酒度」です。
これは簡単に言うと「甘口か辛口か」または「その度合いを表すもの」。
日本酒に含まれる「糖分」を表し、これが多いほど「マイナス(甘口)」に、少ないほど「プラス(辛口)」になります。
ただし日本酒の味は日本酒度だけでは決まらないので、あくまで参考程度ということです。
一方で、時々「プラス20」などという日本酒に出会うこともありますが、これは分類的には「超辛口」。しかし「辛い」わけではなく“サラッと”してくるイメージといえます。
酸度
日本酒度と同様に重要なスペックが「酸度」です。
これはその字の通り「日本酒に含まれる酸の量」を表します。
日本酒には、その製造過程で原材料から発生したコハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸などが含まれています。
一般的には「酸度が高いと辛口に、低ければ甘口に」感じると言われますが、それぞれの酸の多少によっても味は変化します。数値的な平均は1.3〜1.5程度とされています。
アミノ酸度
アミノ酸度もスペックとして重要ですが、ラベルに記載しない酒蔵も多いので、それほど気にしなくてもよいでしょう。
傾向としては「高いと“旨みやコク”を感じ、低いと“あっさり”した酒質」に感じます(平均は1.3〜1.4前後ですが造りでも変わります)。
その他の基礎用語
その他、日本酒を楽しむにあたってよく目に耳にする用語をいくつかご説明します。
特に日本酒のラベルによく記載されるものは覚えておきましょう。
「原酒」
清酒として搾った後に加水(水でアルコール分の調整をすること)をしていないもの。
加水後の酒が14〜16度くらいのアルコール分に対して「原酒」は17〜20度と高くなります。
「生酒」
一般的な日本酒は貯蔵時と瓶詰時の2回「火入れ」(酒の中の酵素の働きを止めて品質を安定させる)を行いますが、これを行わない酒を「生酒」と言います。
搾りたて独特の口あたり(微妙な刺激)やフレッシュな味と香りが楽しめます。
火入れをしていないので、保管は「要冷蔵」になります。
「ひやおろし」
搾った新酒を劣化しないように春先に火入れをして、ひと夏「貯蔵」し秋の出荷時には火入れをせずに「冷やのまま卸す」ことからそう呼ばれる酒。
ひと夏の貯蔵で、落ち着いたなめらかな口当たりになります。
「生貯蔵酒」
こちらは「ひやおろし」とは逆に「生のまま貯蔵して、出荷前に火入れをする」ものです。
市販酒で「生」と表記のある酒のほとんどがこの生貯蔵酒で「生酒」ではありませんが、現在の発展した技術によって、搾りたての風味が残った(生酒のような)高品質なものも製造されています。
「生酛(きもと)」「山廃(やまはい)」
(細かい話しは省略しますが)日本酒を作るときは人工的な「乳酸」を添加します(速醸酛といいます)が、「生酛」や「山廃」はそれを使わずに、自然の力で乳酸を生み出して利用する酒の造り方です。
伝統的といえる酒の作り方で、時間と手間がかかる代わりに「旨み」や「コク」の深いものに仕上がります。
そのため“温度を上げること”でその真価を発揮する、つまり「燗酒向き」のお酒になります(あくまで傾向です)。
日本酒の選び方
日本酒の楽しみ方はいろいろ、ここではその選び方をご紹介しましょう
香りと味わいから選ぶ
日本酒を選ぶ基本は「香り」と「味わい」からになるでしょう。
例えば「香り」の高いものをA、少ないものをB
さらに「味わい」濃い(重い)ものをC、薄い(軽快な)ものをDに分けると、その組み合わせは【AC・AD・BC・BD】という4種類になります。
この分類から
【AC】香りが高く味わいも深い「熟酒(じゅくしゅ)」タイプ、古酒や長期熟成酒系
【AD】香りが高く華やかな「薫酒(くんしゅ)」タイプ、大吟醸酒や吟醸酒系
【BC】旨み・コクがしっかりした「醇酒(じゅんしゅ)」タイプ、純米酒・山廃/生酛系
【BD】なめらかで軽快な飲みやすい「爽酒(そうしゅ)」タイプ、本醸造酒や生貯蔵酒系
という傾向が読み取れます。
これらを基準にお酒選びをしてみるのも一法です。
この分類を使ってお酒選びが楽しめる札幌の店をご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
この店に行ったら「お酒のメニュー」に注目!です。
料理に合わせる
日本酒は「米」から造られるお酒ゆえ、料理との相性が良い「食中酒」です。
あくまで基本的な考えですが、以下のような組み合わせがおすすめといえます。
「刺身・天ぷら」など:淡白系の素材に塩・醤油で味付けするものは辛口や淡麗なタイプ(ADやBD)が合う
「煮物」など:濃い目の味付けにはボディのしっかりした濃醇タイプ(ACやBC)が合う
この両軸を基準に選んでみるとよいでしょう。
さらに「甘口」の料理には甘口の日本酒、「脂っこい」料理などは淡麗(軽快)なタイプで洗い流すケースや、熟成タイプでじっくり味わう両面の相性もあります。
これは和食以外の洋食や各国の料理にも応用できる考えです。
飲む温度で選ぶ:燗酒の楽しみ
日本酒のお酒としての大きな特徴のひとつが「お燗ができること」です。
温めて飲むだけであれば「ワイン」や「ウイスキー」などにもありますが、日本酒は冷やしたものから熱々に温めたものまでその幅が広く、さらに温度によって味わいが大きく変化する点が他の酒にない特徴といえるでしょう。
ただしそんな日本酒でも、お燗に向いた酒とそうでない酒があります。
温度と酸度
日本酒の温度による味の変化に大きく影響するのが「酸度」です。
日本酒の酸度を構成する酸としては「コハク酸」が最も多く、「乳酸」「リンゴ酸」との3種類で約8割を占めています。
このうち「コハク酸」と「乳酸」は温度が高いと旨みを感じさせ、「リンゴ酸」は温度が低い方が爽やかさを演出します。
これによって、爽やかなリンゴ酸が多い「吟醸酒」系は冷やした方がおいしく、「山廃」や「生酛」系などのコハク酸や乳酸の多い酒は一般的に「酸度」も高くなるので、「燗酒」に向いているといえるでしょう。
燗酒におすすめの銘柄
温めて旨みの広がる酒の代表が「山廃」や「生酛」という種類の日本酒です。
手作業の要素が強く、時間もかかるこれらの製法による日本酒は特に「コク」や「旨み」が強くなります。そしてコクや旨みは温めることでよりその味わいが深くなります。
福島県の大七酒造が醸す「大七 純米生酛」は、燗酒として定評があり各種のコンテストやアンケートでトップに選ばれている銘柄です。
全量をあえて手間のかかる「生酛造り」とする大七ならではの味わいが楽しめます。
その他、埼玉県の「神亀」、愛知県の「米宗」、京都の「玉川」など、全国にはお燗でおいしく飲めるお酒がたくさんあります。
食事を盛り立ててくれる日本酒を選びましょう
グルメな食事を楽しむときに役立つ日本酒の基礎知識をまとめてみました。
日本酒は数あるお酒の中でも「食中酒」として料理の味を盛り立ててくれるもの。そのセレクト次第でその日の食事の味わいも大きく変わります。
今回ご説明したほんの基礎知識でもそのお役に立てるはずです。ぜひおいしい食事と日本酒を楽しんでください。